平成27325

第189回国会 厚生労働委員会 第4号

○角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 初めに、子ども・子育て支援について、所信において、妊娠から子育て期までの切れ目のない相談支援を提供する整備を行うとされたことについて、特に発達障害を含め、気になる子への支援の充実等の関係についてお伺いをしたいと思います。

 子育てに関する相談支援の充実のために、具体的には、ワンストップ拠点としての子育て世代包括支援センターの整備を全国的に進めるとされております。これは積極的な整備が望まれますが、そもそも包括支援センターの目的は、これまでさまざまな機関が個々に行ってきた支援を、子供と保護者のニーズに応じたきめ細やかな切れ目のない支援が講じられるように、サービスのコーディネートを行うということが主眼であると思いますが、このことは、裏を返せば、個々の支援が充実していなければその目的も果たせないということになろうかとも思います。

 妊婦健診であるとか乳幼児期の健診、親子教室など母子保健の事業や、子育て支援センターや保育所、幼稚園など福祉、教育の分野でも、現状、さまざまな支援が行われているわけですが、子育て支援の現状を見た際、もっと充実が必要な支援は、例えば虐待を受けた児童への支援を初め幾つかあると思っておりますが、ここでは気になる子への支援ということに絞ってお伺いをしたいと思います。

 発達障害を含め、気になる子への支援については、何よりも早い段階での気づきが重要になるということは論をまたないことだと思います。早期の気づきから支援へと結びつけていくために、現行実施されているメニューの中で私自身が重要だと思うのは、まず三歳児健診での気づきだと思っております。

 この点について、気になる子の気づきから早期支援に結びつけていくために、どのように取り組んでいくのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。

○安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 母子保健法では、市町村は、満三歳を超え満四歳に達しない幼児に対して、健康診査を実施しなければならないとされております。

 この三歳児健診では、精神発達の状況、言語障害の有無及び育児上問題となる事項などにつきまして検査を行うとともに、それぞれの児童の精神的発達や社会的適応に関する観点などを踏まえまして、相談対応を行っております。

 さらに、健康診査の結果、必要と判断された場合には、精密健康診査を行うために医療機関へつなげるなどしているところでございます。

 このような取り組みを通じまして、健康診査の場においても、可能な限り、特別な支援が必要となる可能性のある子供の早期発見に努めているところでございます。

○角田委員 個々の事業に関して、もう一点伺いたいと思います。

 早期の気づきと支援のための事業として、発達障害等の専門的な知識を有する専門員が保育園や幼稚園などを巡回して施設のスタッフや保護者に対してアドバイスを行う、巡回支援専門員整備事業というメニューが現在用意をされております。

 私自身も、七年、八年ぐらい前になりますが、気になる子への対応に苦慮している、そうした幼稚園等の現場の声を聞いて回って、これは絶対に必要だとの思いで、心理の専門職を含むチームによる、保育所、幼稚園等を対象とした巡回相談を議会で訴えて実施してもらった経験もありまして、これは非常に重要な事業だと思っておりますが、現状は、地域生活支援事業のメニューの一つという位置づけで、やるかやらないかは市町村任せとなっております。

 専門員を配置している市町村は昨年六月末現在で約四百市町村と、全市町村の二割程度にとどまっており、より積極的な取り組みが必要ではないかと思いますが、このことについて御見解をお伺いしたいと思います。

○藤井政府参考人 お答えをいたします。

 厚生労働省におきましては、先生の御指摘の、気になる子の早期発見、早期対応のための気づきを進めるために、専門家が保育所等を巡回し、施設職員や保護者等に対して助言等を行います巡回支援専門員の整備を市町村が実施する場合に、統合補助金でございます地域生活支援事業の対象として支援を行ってきておるところでございまして、二十六年の六月三十日時点で、これも先生御指摘のように、全国で四百四市町村で現在実施をしているという状況でございます。

 この取り組みにつきましては、私どもとしましても普及を図ってまいりたいというふうに考えておりますけれども、一つの課題として、気になる段階の支援を担当する市町村の子育て支援の部門と障害福祉の部門の双方の連携が重要であるとも考えておりまして、今後、主管課長会議の場等の機会も捉えまして、市町村における両部門の連携の構築なども促しながら、この巡回支援専門員の普及を推進してまいりたいと考えております。

○角田委員 気になる子供への支援の充実ということに関して、最後に、これまでほとんど顧みられてこなかった障害についてもぜひとも支援の充実を図っていただきたいとの思いで質問させていただきます。このことは、先日の予算委員会の分科会でも文科省に対しても質問させていただいたことなんですが、これは保健福祉の分野でも取り組みが必要なことであると思いますので、ここでも取り上げさせていただきたいと思います。

 場面緘黙症という障害があります。選択制緘黙とも言われておりますが、家庭では普通に話せるのに、学校など特定の場面で全くしゃべることができなくなってしまう。実際に緘黙で悩んでいる方の言葉をかりると、いざ声を出そうとしても喉が詰まっているような感じになり、頭が真っ白になってしゃべれなくなる、あるいは、しゃべること以外にもいろいろなことに不安感を持ちやすく、周りの目が気になって体が固まってその場から動けなくなったり、動けても、手が震えたり、思うように行動ができなくなるという障害です。

 場面緘黙症に関する研究はまだ乏しく、なぜ起こるのかも、さまざま言われておりますが、実際のところははっきりしておりません。問題行動を伴うとか、そのような目立つ特徴がなく、家では普通に話せるために親や家族も気づきにくいことから、そのまま放置されることが極めて多い。また、極度の人見知りなどで片づけられることが多かったことが、この障害に注意が払われてこなかった大きな要因だろうと思います。

 発症は大体三歳から四歳ごろと言われますが、気づかれるのはかなり後になってから、しかも、不登校や引きこもりなどの問題で相談した際に初めて場面緘黙症だと気づかれるケースがほとんどということで、その間、適切な支援が講じられてこなかったがために状態が深刻化していることもまれではありません。

 そこで、厚生労働省としては、場面緘黙症、選択制緘黙の子供の実態について把握されているのかどうか、まずお伺いをいたします。

○藤井政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる緘黙児についての御指摘でございますけれども、厚生労働省として、緘黙児の実態を把握している状況にはございませんで、今後、どのような手法であればこの実態を把握していくことが可能なのかという点も含めまして研究をしてまいりたいというふうに考えております。

○角田委員 ぜひそれも進めていただきたいと思います。

 この場面緘黙症の子供がどれだけいるのか、発症の頻度について国内でも幾つかの調査がありますが、これもかなりばらつきがありますが、おおむね〇・二%から〇・五%ぐらいと推計されているようです。海外では〇・七%とする調査もありますが、仮に出現率を〇・五%とすると、今、小学校に三万三千人、中学校に一万七千人余り在籍する計算になります。

 これに、小中学校の情緒障害を対象とした特別支援教室や通級指導教室で支援を受けている子供の数を重ね合わせますと、実際に教育現場などで支援を受けているのは全体の一%ぐらいしかいない。これは、発現率を〇・二%にしても、二、三%ぐらいしかいないというような現状が推測をされるわけです。

 何の支援も行われていない大部分の子供たちはどのような状況に置かれているのか。ほかの子供と同じように話すことができず、周囲からも理解のない対応、例えば友達からのいじめ、さらには、教師も理解がないため、しゃべることを強要され、叱られたりする中で、自尊心の低下を招き、無力感や不安を引きずったまま、不登校や引きこもりになってしまうというケースもあります。

 また、無理解による嫌がらせを受けながらも無理して学校に通い続けた結果、緘黙症を引きずったまま、うつ病を発症するなど、二次障害に苦しんでいる方もいらっしゃいます。

 この障害に苦しんでいる多くの子供に適切な支援が講じられるよう、気になる子の早期の気づきと支援の充実の中で、ぜひとも場面緘黙症の子供についても注意を払っていただきたいと思います。

 具体的に何ができるかを考えた場合、例えば三歳児健診の機会に、意識して場面緘黙症を拾い上げることができるようにする。緘黙児の約七割に発達障害が認められるという報告もあり、言葉のおくれや手足の動作のぎこちなさなどのサインを示すことも多いといいます。健診に携わる医師や看護師、保健師等への啓発を進めていただき、保護者への相談や、親子教室などで適切なアドバイスや支援に結びつくよう、体制の整備を進めていただきたいと思います。

 さらに、保育所や幼稚園、さらには認定こども園など、幼児期にかかわる保健師、保育士、幼稚園教諭の理解と支援のために、専門家による巡回相談で適切なアドバイスが行われるよう、まずは国立障害者リハビリテーションセンターでの研修等に場面緘黙症についても取り入れることを求めたいと思いますが、ただいま申し上げた提案も含めて、御見解をお伺いしたいと思います。

○藤井政府参考人 先生御指摘のように、支援をしていただく方の認識を高めていくということは大変重要な課題だというふうに考えております。

 私ども、まず今考えておりますのは、先生御指摘をいただきましたように、巡回支援専門員の研修といたしまして、これは国が実施する研修として、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて研修を実施しておりますけれども、これまでは、この研修において緘黙児をテーマとするような講義は実施してきておりませんでしたけれども、来年度の研修から緘黙児を研修のテーマに取り入れまして、理解が広がるよう努めてまいりたいと考えております。

○角田委員 場面緘黙症それ自体は、発達障害に含まれておりません。それだけに、福祉や教育、さらには就労といった各段階でのサポートが受けにくいという現状があります。私自身は、この障害で悩み苦しんでいる方は、青年を含めて非常に多いという印象を抱いております。ぜひとも、実態を把握していただき、適切な支援が講じられるよう積極的な取り組みをお願いしたいと思います。