平成27310

第189回国会 予算委員会第四分科会

 

○角田分科員 公明党の角田秀穂でございます。

 当選後、初めて質問に立たせていただきます。早朝からお疲れかと思いますが、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 初めに、特別支援教育について幾つかお伺いをいたします。

 来年度の予算案において、特別支援教育の充実に向けて、インクルーシブ教育システムの構築のための、障害のある児童生徒等の自立と社会参加の加速化に向けた取り組みの充実を図るとしております。これは、障害者権利条約批准に当たっての環境整備として前面に押し出されてきたものと思いますが、では、具体的に、我が国においてインクルーシブ教育というものをどのように考え、その将来像をどのように描いているのかということが私自身もイメージがよくできておりませんので、まずこのことからお伺いをしたいと思います。

 現在進められている特別支援教育、特別支援学校や特別支援教室、通級指導教室など、整備充実が進められているわけですが、その流れが今後変わっていくのかどうか、このことも含めて、具体的にどのように取り組みを進めていこうとしているのか、まずお伺いをしたいと思います。

○下村国務大臣 昨年一月二十日に我が国が批准した障害者の権利に関する条約において提唱されたインクルーシブ教育システムの実現に向けた取り組みは非常に重要だというふうに考えております。

 インクルーシブ教育システムにおきまして、同じ場でともに学ぶことを追求するとともに、障害のある子供の教育的ニーズに的確に応えることができるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学び場の整備が必要だというふうに考えます。

 このように、インクルーシブ教育システムにおきまして特別支援学級も大きな役割を担うものであり、文部科学省においては、特別支援学級の増設や学校のバリアフリー化、用途変更のための施設整備に対して経費の一部を補助しております。

 また、インクルーシブ教育システム構築に向けた取り組みを支援する事業や、児童生徒フ日常生活上の介助や学習活動上のサポートを行う特別支援教育支援員の配置に係る地方財政措置等を実施しており、引き続き、インクルーシブ教育システム構築に向けた特別支援教育の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

○角田分科員 そのように、これからインクルーシブ教育を推進していくに当たって、その充実のためには、それにかかわる人材の養成確保というのも非常に大きな課題になってこようかと思います。

 このことについて、特別支援学校の学級数をふやす、特別支援学級をふやすという場合に、教室は確保できても、十分なスキルを持った教員を確保することが難しいために、十分な対応が困難というような現場の声も聞きます。

 教員の年齢構成の偏りというものもその一因として指摘をされております。現状を見ますと、教員の年齢構成は、公立の小学校、中学校とも、四十五歳以上が五割以上を占めている、その分、若い方が少ないという現状がございます。

 今後、教職員の資質の向上をどのように図っていくのか、人材を確保していくかが大きな課題だと思いますが、この点についてどのようにお取り組みになるのか、お伺いをしたいと思います。

○小松政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの御指摘のとおり、特別支援学級などの特別支援教育を担当する先生方の専門性を向上していくということは大変重要な課題になっていると考えております。とりわけ、その学級数や対象人数がふえている中でのことでございます。

 そこで、文部科学省におきましては、一つは、各教育委員会に対しまして、学校の内外での研修の実施による先生方の専門性の向上というものを求めてきております。これは、毎年、さまざまな打ち合わせの場で求めているところでございます。

 それから、もう一つは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所におきまして、各都道府県の指導者層、先生方の研修の中心になる指導者層の人々を育てるための研修を行っております。二カ月にわたって二百名ずつ研修していくという相当なものでございます。こうしたものや、協議会などを実施しているところでございます。

 それから、もう一つの手段といたしまして、特別支援学級を担当する先生方については、特別支援学校の先生の免許状を保有しているということが専門性の向上の観点から望ましいということが言えます。そこで、この点につきましては、教育委員会に対しまして、免許状取得のための免許法の認定講習の受講機会の拡大を求めるということをいたしております。

 そして、あわせまして、平成二十七年度の予算案につきましては、大学に対してこの免許法認定講習の開設を委託する特別支援教育に関する教職員等の資質向上事業というものを拡充して計上しているところでございます。

 こういうさまざまな手段によりまして、特別支援教育に関する先生方の御指摘の専門性向上というものに努めてまいりたいと考えております。

○角田分科員 今後、特別支援教育の充実を図っていく上で大事なことというのは、一人一人の子供のニーズに合った適切な指導、支援というものが講じられていくことが一番大事だろうというふうに思います。そうした意味で、これから、一貫した支援、これをどう図っていくのか、こうしたことも大きな課題になってこようかと思います。

 今、地方創生総合戦略の一環として、出産から子育てまで総合的な相談支援というものをワンストップで提供する拠点として、子育て世代包括支援センター、いわゆる日本版ネウボラの整備が全国的にこれから進もうとしております。こうした流れに合わせて、就学前から就学した後まで一貫した適切な支援が講じられるよう、教育の側からもより一層の連携の取り組みというものが求められてくると考えますが、このことについて御見解をお伺いしたいと思います。

○小松政府参考人 ただいま御指摘のとおり、障害のあるお子さんへの早期からの支援、就学前後を含めた一貫した支援のためには、就学の前から関係機関との連携による一貫した支援を行うということが必要だというふうに私どもも認識をいたしております。

 そこで、各都道府県教育委員会及び、これは知事部局も関係いたします、知事に対しまして、この旨を通知によって求めているところでございます。

 それから、文部科学省におきましては、教育と保育、福祉、保健、医療等の連携によりまして、本人と保護者への情報提供や教育相談等を行う、早期からの教育相談・支援体制構築事業というものを実施いたしております。関係機関の連携のためのコーディネーターを配置していくような事業で、拠点的なものでございます。平成二十七年度の予算案におきましても約三億円を計上しているところでございます。

 今後とも、障害のある子供の自立と社会参加に向けまして、今御指摘の早期からの一貫した支援に努めてまいりたいという方針でございます。

○角田分科員 ありがとうございます。

 特別支援教育に関して、最後に、少し絞りまして質問させていただきたいと思います。場面緘黙症の子供への学校現場での支援ということについて質問をいたします。

 場面緘黙症とは、家庭などでは普通に話すことができるのに、学校や幼稚園といったある特定の場面、状況では全く話すことができなくなるという障害でございますが、具体的には、いざ声を出そうとしても喉が詰まっているような感じになり、頭が真っ白になってしゃべれなくなる。しゃべること以外にも、いろいろなことに不安感を持ちやすく、周りの目が気になって体が固まって、その場から動けなくなったり、動けても、手が震えたり、思うように行動ができなくなる。

 過去において、このような全く口をきけなくなってしまうことや硬直して動けなくなってしまう場面緘黙症は、極度の人見知りであるとか、放っておいてもいつかは直るだろうということで片づけられ、この障害に対する理解や支援については余り顧みられてこなかったようであります。

 緘黙は基本的に家の外で症状が出るので、親や家族は気づきにくく、ただのおとなしい子として放置されてしまうことが少なくありません。

 場面緘黙症の子供はどの程度いるのか。海外の研究では、〇・七%、千人中七人程度という報告もありますが、研究自体が余り進んでおらず、正確なところはどうもわからないようですが、私のもとにも、場面緘黙症で悩み苦しんでいる方からたくさん声が寄せられており、この問題で苦しんでいる方はかなり多いのではないだろうかという印象を抱いています。

 そこでお伺いしますが、場面緘黙症の子供についての実態をどのように把握されているのか、まずここからお伺いしたいと思います。

○小松政府参考人 場面緘黙症あるいは選択性緘黙と言われることで苦しんでおられるお子様たちがいらっしゃることは把握しておりますが、それに特化した形で数値等を把握はいたしておりません。

○角田分科員 ある場面緘黙症で苦しむ方は、自分が緘黙症だと知る由もない子供は、いつかはみんなのように話せるようになると信じていますが、頑張って学校に通えば通うだけ日々挫折し、できない自分が悪いと、内からも外からも責められ続けるようになりますと訴えておられます。

 適切な支援が講じられなければ、ほかの子供と同じように話すことができず、周囲からも理解のない対応、例えば友達からのいじめであるとか、さらには、教師も理解がないために、しゃべることを強要されたり叱られたりする中で、自尊心が低下し、無力感や不安を引きずったまま、不登校や引きこもりになってしまうケースもあります。

 また、無理解による嫌がらせを受けながらも無理して学校に通い続けた結果、緘黙症を引きずったまま、うつ病を発症するなど、二次障害に苦しんでいる方もいらっしゃいます。

 発達障害を含めて気になる子供の中で、例えば多動など目立つ子と、場面緘黙症の子供のように目立たない子の大きく二つに分けられるかとも思いますが、このうち、目立たない子は、放っておいても授業の妨げになることはありませんので、目が向けられない傾向もあるのではないかというふうに思っております。

 早期の支援のためには、その前提となる気づきができるかどうかが大事になってくると思います。その病気なり症状なりに対する理解を持っている人がたくさんいるにこしたことはありませんが、特に場面緘黙は、家庭では普通に会話ができる、学校など特定の場面で話ができなくなりますので、当然のことながら、気づく人も非常に限られてきます。保護者はなかなか気づくことができない。学校現場の教員でなければ気づくのが難しいのではないかとも思います。

 そうであるからこそ、場面緘黙症に対する教職員の理解を深める取り組みと適切な支援をぜひとも進めていただきたいと思うものですが、この点について御見解をお伺いしたいと思います。

○小松政府参考人 場面緘黙症あるいは選択性緘黙への対応、これは、さまざまな特別な学習支援のニーズを持たれるお子様方がいらっしゃるわけですが、その方々の中で、この点も含めまして、一つは、特別支援教育を行うための体制の整備として、各学校において、校長先生のリーダーシップのもとに、この特別な支援を必要とする児童生徒さんがいらっしゃるという状態を把握する、このことと、それから、支援方策の検討を行うための校内の体制、特別支援教育に関する委員会の設置等、全校的な支援体制を確立するということが大事だと思っております。

 私どもといたしましては、この点につきまして、通知をもって取り組みの推進を求めているところでございます。平成十九年にこの通知をいたしまして、平成二十五年の段階で、私どもが調べました範囲では、幼稚園から小中高の中で八六・五%の学校が、校内にそういう委員会を設置するというところへ来ているところでございます。

 この選択性緘黙のお子さんたちにつきましても、こうした中で、各学校において実態を把握し、お一人お一人違う個別の教育的ニーズに応じて、通級による指導、特別支援学級等による指導、さまざまございます必要な支援を行うという形になっております。

 それから、その知識等を持っている先生方が必要だという点に関しましては、この場面緘黙症、選択性緘黙を含む障害ごとの特性や教育的対応等につきまして、実は私ども、教育支援資料というものを作成しております。ここではこの点も取り上げているものでございます。これを各学校等における児童生徒の実態把握や支援方策の検討においても参考としていただくという観点から、教育委員会等への配付という方法と、ウエブサイトへの掲載により、周知を図っております。

 ぜひとも積極的に御利用いただくとともに、私どもとしても、引き続き、各学校において、こうした障害をお持ちのお子さんに対する全校的な支援体制の確立をさらに進めたいというふうに思っております。

○角田分科員 ありがとうございました。

 多く訴えられていらっしゃる方、やはり現場の先生に適切な対応を望んでいる声が非常に多うございす。どうか場面緘黙症で苦しむ人に対する理解と支援というものが広がるよう、今後さらに積極的な取り組みを要望させていただきたいと思います。</div>