平成17年第2回船橋市議会定例会会議録(第8号・5)
●角田秀穂議員 防犯・防災へのITの活用の可能性についてお伺いをいたします。
携帯メール等を活用した防犯対策については、今議会においても先番議員から多くの貴重
な提言がなされております。この議論の中で、防犯や防災に関する情報共有の手段として、希望者に対し電子メールで配信するシステムを10月から運用開始す る方向で、詳細についてこれから詰めていくとの行政側の考えが明らかとなりました。
私自身、過去の議会において、市民の生命、財産を守る手段として、近年、急速に利用者
がふえているインターネットの活用を主張してまいりましたので、そうしたシステムの運用に向け、前向きに検討されることは歓迎するものですが、その一方 で、どうせつくるのなら、より大きな効果が期待できるシステムを目指すべきではないかとの思いから、先進都市の事例も眺めながら、幾つかの提案をさせてい
ただきたいと思います。
防犯・防災情報の市民へのメール配信の試みは、この1年ほどの間に多くの自治体で行わ
れてきておりますが、その効果についてはいずれも導入から日が浅いことなどから、十分な検証がなされているとは言えません。私自身、少なからずお金をかけ て、市民の生命、財産を守るために、効果を最大限発揮するにはどのようなシステムをつくればよいのか、いろいろ考えてもみましたが、現段階で1つの結論と
しては、電子メール配信の長所と短所をよく把握した上で、核になるユーザーを持てるシステムを考えるべきであるという1つの結論に達しております。
まず、電子メール配信システムの短所からですが、今議会においても、答弁の中で文字情
報しか配信できないなどのデメリットが示されましたが、それにも増して大きな欠点は情報を配信すべき市民のメールアドレスの管理が極めて難しいということ です。船橋市がこれから運用しようとしているシステムがどうこういうことではなく、一般論として、市民にとって役に立つ情報を配信しますから希望者は登録
してくださいとアナウンスして、自治会等にも啓発活動を行えば、運用開始直後には船橋でも恐らく何千件かの登録は見込めると思います。ただ、それが1年経 過した後に、防犯・防災情報を配信した場合、どのようなことが起こるのかということを考えてみますと、恐らくは登録されたアドレスのうち何割かは配信でき
ない事態になっていると思われます。
この原因は、配信を希望した市民が役に立たないから登録を取り消したということではあ
りません。ほとんどがメールアドレスを変更したにもかかわらず変更手続をしてくれなかったことによるものです。メールアドレスは電話番号と違い、通信事業 者が割り当てるものではなく、自分で設定し、しかも随時変更が可能なものです。また、契約している会社を変えればアドレスも変わります。
携帯電話番号については、会社が変わっても従来使っていた電話番号を引き続き使用できるポータビリティ制度の導入が図られようとしておりますが、メールアドレスについてはそのようなことができません。メールアドレスの変更の頻度は電話番号の比ではありません。
私自身、4年ほど前から幾つかのメーリングリストを運用しておりますが、1年間で登録
者の2割程度はアドレスが変わります。しかも、悲しくなるくらいにアドレスの変更を連絡してくれません。メーリングリストでやりとりされている内容は、登 録者にとって共通の趣味に関するもの、すなわち関心が高い情報であるにもかかわらずです。
私自身の経験も踏まえて言わせていただければ、少しは役に立つ程度の情報の配信では、
アドレスが変わった際に変更手続をしてくれない。登録しておかなければ損をするというぐらいの情報を配信するシステムでないと、維持していくのが難しいも のです。せっかくつくるシステムの登録件数が2,000件、3,000件というのでは、余りにももったいない話だとも思います。
東京都荒川区では学校情報の配信をベースとしたメール配信システムを区内小学校4校で
の試行を経て、昨年6月から区内23小学校すべてでスタートさせました。このシステムで取り扱う内容は、校内、学校周辺で発生した事件や事故の速報、台風 等災害時の情報のほか、学校行事の日程変更及び確認、インフルエンザの発生状況など健康管理に関する注意事項、保護者会、個人面接、家庭訪問、PTA活動
などの日程連絡で、ことし1月現在の23校の平均登録率は61.9%、登録件数は4,383件に上っています。
また、同じ千葉県内の柏市でも、荒川区と同様のシステムをことし9月から小学校に加え、幼稚園も対象としたシステムとして運用を予定しておりますが、柏市では、このシステムの利用者数を6万人と見込んでおります。
荒川区や柏市のシステムの場合、登録者は小学校や幼稚園の保護者に限られてしまうとい
うデメリットもありますが、一方で確実に核となる市民ユーザーを確保できるシステムであるとも言えます。こうした核となる市民ユーザーに加えて、地元の自 治会等を巻き込んでいくことによって、利用者をふやしていくことが、結果としてこれから申し上げる災害時の被害軽減にも役立っていくのではないかと考えま
す。
さて、メール配信システムを考える上でのポイントとして、これは長所に数えられると思
いますが、携帯メールの配信システムは、恐らく災害に強いだろうということであります。これを踏まえてメール配信システムのもう1つの核となるユーザーと して、市の職員を念頭に置いたシステムづくりを提案したいと思います。
携帯電話の通信ネットワークは携帯電話からの電波を最初に受ける基地局と通信を中継す
る交換・中継局などから構成されていますが、携帯電話と基地局──基地局というのは鉄塔やビルの屋上に設置されたアンテナですけれども──は無線で結ばれ ているため、有線回線のような断線がそもそもなく、災害の影響を受けにくくなっております。さらに、中継伝送路は回線が2重化されており、1つの回線が使
えなくなっても、もう1つの回線を使って通信が途絶しないようになっております。最も数の多い基地局は震度7の揺れにも耐えるように設計されており、昨年 の新潟中越地震の際も、携帯電話加入者数で5割のシェアを持つNTTドコモの場合ですが、土砂崩れで基地局が根こそぎ持っていかれたという事例はあるもの
の、地震の揺れそのものでの被害はなかったとのことです。
また、災害時に電気の供給がストップした場合にも、基地局はバッテリーが作動して機能
し続ける設計になっており、停電が長期化した場合には、移動電源車が基地局を巡回して充電を行う体制をとっております。端末である携帯電話も当然バッテ リーで動いていますので、仮に停電をしてもバッテリーがもっている間は通信が可能ということになります。
特に船橋のような都市部は基地局配置の密度が高いため、1つの基地局がダウンしても別の基地局でカバーされる、もしくは多少移動すれば通信可能エリアに入る可能性が大きいと言います。
携帯電話の場合、このようなシステムとしての信頼性確保のための取り組みがなされてお
りますが、ただ、音声通話については、大規模災害発生時には通話のふくそうを見越して、すぐに通信事業者側がネットワークに規制をかけますので、極めてか かりにくい状態に陥るのは固定電話の場合と全く同じです。ちなみに中越地震の際には、NTTドコモの音声通話は地震が起きた直後に通常の45倍にはね上
がっております。
一方、メールでの通信、すなわちパケット通信のネットワークは、音声通話のネットワー
クと別々にコントロールされており、少なくともこれまでは、災害時に平常時のように使えなくなったというケースはありません。中越地震の際もパケット通信 のネットワークに対しては、音声通話のような規制がかかることはありませんでした。
では、実際に大都市圏で大規模な地震等の災害が発生した場合、どの程度使えるものなのか、信頼性については、それは起こってみなければわからないとのことなのですが、災害時の通信手段として積極的に活用を検討する価値は十分にあると思います。
東京都板橋区は今年度から職員を対象にした防災情報配信システムの運用を開始しまし
た。基本的な仕組みは、あらかじめ災害の種類や程度に応じて情報を配信すべき職員の携帯メールアドレスをグループ化し、災害発生時には防災情報の配信が必 要なグループに対し情報を配信するというもので、防災情報を受信した職員は配信されたメールに示されたURLをクリックして配信された情報区分に従って、
例えば最も低いレベルでは配信を確認した旨の返信をする。また、最も高いレベルでは集合場所に集合可能か否か、また、集合可能の場合は何分以内、あるいは 何時間以内に可能かを返信するというもので、職員からの返信は瞬時に本部の端末画面に一覧表示をされます。
言うまでもなく、このシステムでは職員だけでなく、核となる市民ユーザーに対しても必
要な情報を配信することが可能です。そして、2次災害、3次災害の被害を軽減するには、核となる市民ユーザーをいかに確保するかという視点からのシステム づくりということが極めて重要な課題だと言えます。
市長は今回の選挙戦において、行政の危機管理ということを特に強調されておられました。市民の安全にかかわる情報を可能な限り職員が共有することが危機管理の重要な要素であるとも思います。
防犯・防災へのIT活用の可能性について、幾つか先進都市の事例を見ながら述べさせて
いただきました。本市の場合、これは何年か前のデータですので、今は数字が多少動いているかもしれませんが、江戸川を越えて東京23区に通勤している市民 は10万人、通学も1万人に上ります。一方、職員も約6割が市外からの通勤者です。
いずれにせよ、市民も職員も市域を越えて日々広域的に移動しているというのが船橋の姿
であります。防犯・防災情報を伝える手段として、電話、ファクス、防災無線、ホームページ等ありますが、船橋の特性を考え合わせた場合、パケット通信の活 用についても積極的に検討すべきと考えます。
ただいま述べた事例も踏まえ、より効果の高いシステム構築を目指すべきと望むものですが、行政としてどのようにお考えなのか、これは先番の議員に対しても助役答弁されていますので、できれば助役のご答弁をお願いしたいと思います。
●助役(井上博士) 防犯・防災対策へのITの活用の可能性についてお答えをいたします。
角田議員ご指摘のとおり、携帯メール配信の長所・短所、まことに的を射たご議論だとい
うふうに考えております。一般的に、こういったメールが利用されるかどうかというのは、魅力ある情報であるかどうかということと、情報を使いこなせるだけ の環境が整っているか、この2点にあるかと思います。
例えば先行している駅前の駐車場案内システムを見ましても、非常に簡単なシステムであ
りますけれども、駐車場案内のほかに、附帯情報を入れることが可能なシステムとなっております。ですので、駐車場案内のほかに、例えば商店街のイベントな どの情報も配信することができるわけでありまして、こういった附帯情報による魅力ある情報づくりということも可能だと思います。
それから、環境づくりで申しますと、この7月から東武百貨店で買い物をした方について
も、南口のフェイスビルの地下の駐車場の駐車券を配るようになりました。これによりまして混雑の多い北口駐車場を避けて、この駐車場案内システムを利用す れば、南口の駐車場を利用するという機会もできるわけでありまして、こういった環境が整えば、より利用されるのではないかと思われます。
さて、防犯・防災対策への携帯メールの利用でありますが、一番の課題はデジタルディバ
イドの問題だというふうに思います。一番、防災・防犯関係の情報を欲している方というのは高齢者の方でありますが、残念ながら、こういった方々が携帯メー ルを自由に使いこなせないという現状にあるわけであります。防災情報でありますと、テレビやラジオ、防災無線の併用、それから防犯でありますと、残念なが
ら表立った情報がありませんので、先番議員の質問にお答えしたように、2本立てで考えていくということが必要になってまいります。
ただ、先行している自治体の例を見ましても、例えば流山で1,000件の登録しかない
ということを申し上げましたが、単につくりましたから市民の方、利用してくださいということでは、確かに利用の促進は図られないだろうというふうに思いま す。今回のシステムについて、特に核になるのが自治会だろうというふうに思っておりますので、早い段階でどういうような形で情報発信をしていくのかという
ことを関係者の皆様方に説明をし、理解をしてもらった上で利用の促進を図っていくということと、あと発信する情報についても適宜見直しを行いまして、必要 な情報が適切に配信されるような仕組みづくり、これに努めていく予定でございます。
それから第2点目、防災に対しまして、市役所の職員を対象にしたシステムづくりという
ご質問がございました。これに関してでありますが、昨年、国の方で消防団の新しい装備に関する検討会というのが開かれました。これについては私もメンバー として加わっておりますし、また、うちの消防局がワーキンググループに参加しております。
昨年4月に報告書をまとめたところでありますが、その中で携帯電話を活用した情報通信
システムの提案をさせていただいております。この報告書をまとめるに当たりまして、実際にパケット通信を利用した参集命令について、実際にシステムの実証 実験を行いました。また、これを踏まえまして、うちの消防局では携帯メールを使いました参集については常に実施しているところであります。
例えば昨年5月でありますが、テロが起こったという想定で、朝5時にメールによる招集をかけたところ、おおむね所定の時間内に必要な人員の招集が図られたということでございます。
そういった意味からも、この通信システムというのは確立したシステムであるというふう
に考えているところでございます。ですので、基本的には導入していくという方向が考えられると思いますが、残念ながらこの報告書でも指摘をしておりますと おり、実際に災害に使うとなると、この通信のほかに既存の通信システム、音声系のシステム、こういったシステムの併用が必要ではないか。それから、比較的
若い人を対象にすれば問題がないんですが、やはり高齢の方もいらっしゃる中で、デジタルディバイドの問題も生じるだろうという指摘をさせていただいており ます。
幸いにしまして、パケット系が比較的災害に対して強いわけでありますが、まだ関東大震
災並みの大規模震災が起こったときの安全性については確証がされておりません。ただ、この研究会をしている過程の中で、通信事業者の方から、災害が起こっ た際に優先的にこういった情報について通信を優先することが将来可能であるという前向きな回答をいただいておりますので、今後こういった課題について、解
決する方向で導入についてこれから考えていきたいというふうに思っているところであります。
最後になりますが、ITを活用した施策、今回も3名の議員から質問を受けたところであ
ります。私は着任した当初からITを使った施策というのは、意外なほどお金がかからずに、さまざまな政策が組めるというふうに考えておりまして、職員にも できるだけこういった施策に取り組んでいただくようにという形で呼びかけてまいりました。やっと今芽が出てきたというふうに考えております。
今回、3名の方から質問をいただいたわけでありますが、なかなかシステム構築に関して
検討中ですというようにあいまいな答えにとどまるのではなくて、むしろ積極的に導入を前提として、ユーザーサイドに立った前向きな提案を受け付けていくと いうことが、本当に効果的なシステムづくりに必要ではないかというふうに考えているところでございます。
以上でございます。