平成17年第2回船橋市議会定例会会議録(第8号・5)

角田秀穂議員  初めに、高齢者、ひとり親家庭、障害者等の住宅確保についてお伺いいたします。

 高齢化の進展やひとり親世帯の増加、障害者の地域での自立した生活の機運の高まりなど に伴って、これらの方々の生活の基盤となる良質な住居確保が大きな課題となっております。こうした方々の住居、住宅確保のためには市営住宅の計画的かつ着 実な整備の推進は言うまでもないことですが、ただそれだけでは今後市民のニーズにこたえ切れないという現状が一方ではあります。

 本市の住宅マスタープランでは、良質な民間賃貸住宅供給を誘導するため、借家住まいの 子育て世帯や高齢者単身世帯などの居住水準の向上を図るため、賃貸住宅供給事業者に対し、既存の公的融資制度や高齢者向け優良賃貸住宅制度などの普及を促 すとしておりますが、高齢者、障害者、母子家庭等の居住確保のためには、実際に何がネックになっているのかを見きわめた上で、より踏み込んだ施策が必要と あると考え、少し質問させていただきたいと思います。

 例えば、高齢者について見ますと、平成13年8月に施行された高齢者居住安定確保法に 基づき、高齢者の単身・夫婦世帯の入居を拒まない民間の賃貸住宅を都道府県に登録した場合、入居者が何らかの理由で滞納した家賃を、国や地方自治体の出資 でつくる高齢者居住支援センターが最高6カ月分まで保証する高齢者円滑入居賃貸住宅の制度がスタートしておりますが、これは千葉県に限ったことではありま せんが、登録の物件数は思うように伸びておりません。

 こうしたことも踏まえ、横浜市は昨年10月に横浜市民間住宅あんしん入居事業という取 り組みを開始しました。保証会社による家賃等の滞納保証と入居者に応じた既存の支援策を講じることで、オーナーの不安を軽減し、高齢者、障害者等の民間賃 貸住宅への円滑な入居を支援しようとするものです。

 この事業を立ち上げた背景として、神奈川県が平成12年に県内不動産業者を対象に実施 した調査で、ひとり暮らしの高齢者に住宅を仲介するときの障害として、「病気、事故等が心配」という回答が最も多く88.1%、次いで「保証人がいない」 という回答が50.0%、「家賃の不払いが心配」35.8%。また、ひとり暮らしの障害者に住宅を仲介するときの障害としては「病気・事故が心配」という のがやはりトップで69.1%、「住宅の安全面が心配」、これが47.5%、「希望物件がない」38.8%を占めております。以下、「住宅改造・使い方の 問題」、「保証人がいない」、「家賃の不払いが心配」と続きます。ひとり親世帯に住宅を仲介するときの障害としては、「家賃の不払いが心配」が最も多く、 52.2%、次に「保証人がいない」が31.1%。

 いずれも家賃をちゃんと払ってくれるのかどうか、滞納した際の保証人がいないということがネックとなっており、仮にこれがクリアされたとしても、病気や事故などの不安が民間住宅入居の大きな妨げとなっている実態が浮き彫りとなっております。

 また、こうした実態は本市においても当てはまることであると思います。こうした障害を 取り除くため創設された横浜市の事業では、民間の保証会社による家賃保証と、さらに住宅だけでなく福祉など関係部局の連携による入居後の居住支援を一体的 に行うことで、オーナーの不安感を軽減して入居の機会を拡大しようとする取り組みであります。

 対象となる方は高齢者、障害者、外国人、特定医療疾患受給者、児童福祉施設等退所者、ひとり親世帯、DV被害者、生活保護受給者、ホームレス自立支援センター退所者など、同様の事業を実施している他の自治体の中でも、対象がかなり広いのが特徴の1つとなっております。

 事業の具体的な内容は、まず家賃保証については、市の提示した条件に対して応募した民 間の保証会社2社と協定を結び、家賃等の滞納に対して契約日から2年間、滞納分を貸し主に支払うほか、賃借人の行方不明及び死亡等による退去時の家財等撤 去費用や原状回復費用、さらには明け渡し訴訟等の法的手続に要する費用を保証するという内容で、このための初回保証料は2年の期間で月額賃料等の30%、 例えば家賃、共益費合わせて1カ月10万円という場合、契約時に払う初回保証料は3万円ということになります。2回目以降の保証料、つまり2年後の契約更 新の際の保証料は賃料等の20%となります。

 同市の事業では、入居者の所得に応じて初回保証料の一部が助成され、生活保護世帯や自立のため福祉施設等を退所する場合は保証料の全額、また、市民税非課税の場合は半額が助成されます。

 もう1つの柱となる居住支援については、例えば高齢者に対しては必要に応じて緊急通報 装置付き電話や火災報知機の設置、ひとり暮らし高齢者世帯への訪問などのサービスが提供されます。もっともこれらは以前から同市が実施している施策です が、住まいを探している側にとっては、住宅に関する相談との窓口を一本化することで、利用できる福祉サービスについても知ることができ、また、貸し主に とっても不安を解消することに役立つという点で効果の高い取り組みだと思います。

 家賃保証自体は東京都内の自治体などでも導入されていますが、仲介不動産業者など、貸す側の障害に配慮したこうした取り組みは大いに参考にすべきだと考えます。

 同市のあんしん入居事業は昨年10月にスタートしたばかりですが、半年経過したことし3月末現在では、同事業を利用して成約までこぎつけたケースが132件に上るとのことです。この事業に協力する不動産業者の数も、現時点で400社を超えているとのことです。

 本市においてもこうした制度の創設を急ぐべきと考えますが、見解を伺いたいと思います。

建築部長(北村耕二) 高齢者、ひとり親家庭、障害者等の住宅確保についてのご質問にご答弁申し上げます。

 保証人がいないことを理由に民間賃貸住宅への入居を断られてしまう高齢者、ひとり親家 庭、障害者等の方々に民間賃貸住宅への入居を円滑にするための支援制度のご提案でございますが、少子・高齢化の進行など、社会情勢が大きく変化する中、家 族形態もまた大きく変化するとともに、高齢者、障害者等の数は年々増加しております。

 ご質問者もご指摘のとおり、高齢者、ひとり親家庭、障害者等の方々の住宅の確保は重要な施策の1つであると考えております。

 ご質問者の横浜市民間住宅あっせん入居事業につきましては、家賃等の支払い能力がある者が保証人のいないことを理由に、民間賃貸住宅への入居を断られてしまう高齢者などの方に、入居支援と居住支援を目的として、平成16年10月1日開始した事業と聞いております。

 高齢者、ひとり親家庭、障害者等の方々は民間賃貸住宅の契約時には一般の方よりご苦労が多いと聞いておりますが、平成13年には高齢者の居住の安定確保を目的といたしました高齢者の居住の安定確保に関する法律が施行されております。

 この法律では、高齢者が円滑に入居し、安心して生活できる賃貸住宅市場の整備や高齢者 円滑入居賃貸住宅の登録を対象とした家賃債務保証制度があります。この制度は高齢者の方が高齢であり、保証人もないため、賃貸住宅へ入居を断られることが ないように家賃を保証するものであり、賃貸住宅の経営者には家賃の不払いの心配がほとんどなくなり、安心して高齢者を入居させることが可能となりますこと から、この制度をご活用していただけたらと考えております。

 この制度の登録につきましては、本市では平成17年7月1日現在、この法律に基づく高 齢者円滑入居賃貸住宅の登録が39件、352戸でございます。しかしながら、高齢者が民間賃貸住宅への入居を円滑にするための制度につきましては、市民の 方々に広く浸透していない状況も見受けられますことから、住宅政策課の窓口及びホームページを通じまして、市民の方々に情報提供しているところでございま す。

 高齢者の方からご相談があった場合には、登録住宅や公的保証人の役割を担う高齢者居住支援センターを紹介しているところでございます。

 また、ご質問の支援制度のご提案でございますが、県を初めとする関係機関や庁内関係部課の福祉政策等との緊密な連携を図りながら、居住の安定確保について適切に取り組んでいくことが必要であると考えております。

 なお、支援事業を行っております先進事例もございますので、今後、実績や効果など、きめ細かく調査研究したいと考えております。

 以上でございます。

角田秀穂議員  高齢者、ひとり親家庭、障害者の住宅の確保についてですけれども、ただいまお考えとしては、とりあえず既にある──例えば高齢者については高齢者の円滑入 居賃貸住宅として登録された物件等に入居してもらえるように、市民への周知等も図っていきたいということなんですけれども、先ほどもご答弁がありましたよ うに、現在、船橋市内で登録されている数というのは39件、戸数にして352戸ということなんですけれども、具体的に登録されている物件を見ていますと、 例えば家賃にしても月13万8000円とか、13万6000円とか、11万4000円、12万円とか、11万、10万3000円、11万6000円という ものも結構目立ちます。

 さらに言えば、今登録戸数が352戸ということですけれども、このうち、今現在空き家 として紹介できる物件がどれだけあるか、さらに言わせていただければ、例えば単身の高齢者で生活保護基準以下の収入しかなくて生活保護を受ける。そうなる と家賃も今単身の場合ですと4万何千円ですか、この範囲で入居が可能な、こうした登録物件の数、今現在あいている物件の数というのは果たして幾らあるの か。答弁は求めませんけれども、そうしたところもよく調べた上で、本当にこれで十分なのかどうか、この制度の活用をすればどれだけの人が住宅を確保するこ とができるのかということもよく考えていただきたいと思います。

 さらに言えば、母子家庭にしても、船橋においても毎年10%程度の割合でふえているわけで、その大半は収入が生活保護基準以下という状況であります。

 こうしたことも踏まえて横浜市では独自の事業をあえて立ち上げたわけであります。横浜 市の事業の場合は、高齢者円滑入居賃貸住宅の場合は高齢者はすべて拒まないという考えから、専門の仲介業者が入居希望者と面接する中で、この人なら大丈夫 という人に対して物件を紹介する、横浜市の事業の場合ですね。こうしたことから、オーナーの理解も得られやすい。したがって、入居可能な物件の候補も多く なり、希望者の選択の幅が広がることにつながってもいるわけです。

 また、母子家庭についても、本市の母子家庭自立支援計画においても、今後の施策の方向 として、民間の賃貸住宅に入居する際の家賃保証サービスを活用した助成制度の研究を、計画の中で今後の施策として掲げられているわけです。ただ、住宅確保 の施策については、福祉が担うよりも高齢者や障害者も含めた住宅政策の部門がまず窓口となって、福祉部局との連携を図っていく方がより現実的ではないか。 すなわちこれが横浜のやり方なわけですけれども、そう考えまして今回の提案をさせていただきました。

 冒頭にも述べましたが、高齢化の進展、母子家庭の増加等に伴い、保証人がいないといっ たようなことがネックとなり、なかなか希望する住宅に入居できないという事例も間違いなく増加してくるわけであります。こうした施策は本市においてもぜひ とも必要だと考えますので、この点については、福祉の部局もぜひご協力をいただき、早期の実現を目指していただきたいと要望いたしまして、私の質問を終わ らせていただきます。