平成15年第3回船橋市議会定例会会議録(第7号・1)
●角田秀穂議員 通告に従いまして、順次、質問を行わせていただきます。
初めに、前回の議会でできませんでした特殊教育について質問をさせていただきます。
特殊教育をめぐっては、平成13年1月に21世紀の特殊教育のあり方に関する調査研究協 力者会議の最終報告において、障害のある子供と保護者に対する乳幼児期から小学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備など、子供の視点に立った1人1人
のニーズに応じた教育的支援を行うという考え方に立った提言が行われました。こうした考え方に立って、文部科学省では、同年10月に特別支援教育の在り方 に関する調査研究協力者会議を設置し、障害のある児童生徒に対する教育の一層の充実を図る観点から検討が進められ、ことし3月にその最終報告が行われまし
た。
この報告におきまして、今後の基本的な方向として、これまでの特殊教育から特別支援教育への転換ということが重要なキーワードの1つとなっております。
盲・聾・養護学校などの特殊教育諸学校や特殊学級に在籍または通級による指導を受ける児 童生徒の比率が近年増加をしていること。障害の態容も重度・重複障害のある児童生徒が増加するとともに、LDやADHD等、通常の学級等において指導が行
われている児童生徒への対応も課題になるなど、障害のある児童生徒の教育について対象児童生徒数の量的な拡大傾向、対象となる障害の種類の多様化による質 的な複雑化も進行している現状に対応するため、障害のある児童生徒1人1人の教育的ニーズを専門家や保護者の意見をもとに正確に把握して、自立や社会参加
を支援するという考え方に立ち、小中学校に在籍しながら通常学級とは別に、制度として全授業時間固定式の学級を維持するのではなく、通常の学級に在籍した 上で、障害に応じた教科指導や障害に起因する困難の改善・克服のための指導を必要な時間のみ特別の場で教育を行う形態、例えばとして特別支援教室というよ
うなものが提示をされておりますが、こうした形態への転換を図っていく必要があると、報告書ではその背景を指摘しております。
その上で、具体的な姿として小中学校の障害のある児童生徒は、障害の状態等に応じてでき るだけみずからが在籍する学級において他の児童生徒とともに学習し、生活上の指導を受け、障害に配慮した特別の教科指導や障害に起因する困難の改善・克服
に向けた自立活動といった特別の指導が必要な時間を、この特別支援教室において担当の教員等から指導を受けることになるとし、学校全体での支援というもの を提示をしております。
この最終報告を受けて、国においても現在、制度改正の検討が進められているようでありますが、いまだにこれまでの特殊教育に代わる普通学級への在籍を基本とした特別支援教育の具体的な姿というものが明確になっておりません。
こうした中、特に「今後の特別支援教育のあり方について」の最終報告が出されて以降、学 齢期の子供を持つ親の間で混乱が広がっている実態があります。例えば、「2年後には小中学校にある特殊学級が廃止され、普通学級か養護学校かの選択にな
る。障害を持つ子供は地域から離れた養護学校に行かなければならなくなる」といった情報がひとり歩きをしており、これから一体どうなるのかといった戸惑い の声を耳にいたします。本市において、そのような具体的な予定があるのかどうか、保護者の不安を解消するためにも、こうした情報の真偽について、まず伺い
たいと思います。
また、こうした情報を学校で聞いたとする方が多くいらっしゃいます。子供を特殊学級に通 わせようと考えていた親が、学校の先生から「来年には特殊学級がなくなるようですよ」と聞かされ、どうすればよいのか途方に暮れてしまったというケース
や、「国の方針が決まってからでは遅い。特学を存続するためには今から運動を起こさなければならない」といった話を聞かされたという方もいます。特殊教育 をめぐってこうした話が学校現場で語られていることが保護者の不安を増幅する一因ともなっているようですが、こうしたことについて教育委員会としてどのよ
うな見解をお持ちでしょうか、お伺いをいたします。
特に、船橋は全国でも真っ先に特学が廃止されるということが語られているようでありま す。本市が今年度からスタートした特別支援教育のモデル事業を実施していることが、どうやらその根拠とされているようであります。このモデル事業につい
て、その目的、内容、今後のスケジュールについて伺っておきたいと思います。
また、こうした保護者の不安を少しでも解消するためには、今後の動向に応じて可能な限りきめ細やかな情報の提供、説明が必要と考えますが、この点について具体的な対応を考えておられれば、お伺いしたいと思います。
●学校教育部長(坂口和治) 学校教育につきまして、初めに特殊教育から特別支援教育をめぐる問題についてお答えいたします。
平成15年3月に特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議は、「今後の特別支援 教育の在り方について」の最終報告の中で、特殊教育から特別支援教育への転換を求めております。議員ご指摘のような情報は定かではなく、船橋市教育委員会
としましては、国や県の動向を見守りながら慎重に対応してまいりたいと考えております。
また、教員や保護者の方々に対して的確な情報を提供してまいりたいと考えております。
それから、教育委員会が取り組んでいる特別支援教育推進体制モデル事業につきましては、 県教育委員会から平成15年度、16年度の2カ年にわたり指定を受け、通常の学級に在籍するLD、ADHD、高機能自閉症等の児童生徒に対し校内体制を整
備し、必要な教育的支援を行うことを目的としております。あわせて教育委員会といたしましても、医師や学識経験者等の専門家チームによる相談活動、巡回相 談員による学校への指導・助言等を行ってまいります。本年度は全小学校で、来年度は全中学校で取り組んでいくこととしております。
なお、特殊教育をめぐる動向につきましては、今後も積極的に情報の提供を行っていきたい と考えております。その一環としまして、9月27日、土曜日に教育委員会と関係教育団体との共催により、文部科学省の特別支援教育課の教科調査官を講師と
して招き、教育講演会を実施することとしており、9月15日発行の広報ふなばしを通じて広く市民の参加を呼びかけたところでございます。
以上でございます。
●角田秀穂議員 2問をさせていただきます。
初めに、特殊教育から特別支援教育への転換をめぐる問題についてということで、現状かなり混乱が、特に学齢期の子供さんを持つ保護者の間で広がっている実態に対して、できるだけそうした的確な情報の提供にまず努めていただきたいということを要望したいと思います。
そして、今のこの特殊教育から特別支援教育への転換をめぐるさまざまな議論の中で、やは り特に心配されている点は、これまでの特殊教育の基盤整備がやはり非常に不十分であるということが1つにはあると思います。最終報告においては、生徒1人
1人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う特別支援教育への転換を図るとする一方で、限られた行財政資源を効果的に活用することを基本とした取り 組みが必要としております。要するに、転換に当たってはお金と人手はできるだけかけないで、これまで蓄積されてきた物的・人的な資源、ノウハウを極力活用
しようということなのだろうと思いますが、こうなりますと基盤の整っているところとそうではないところでは、ニーズに応じた効果的な教育的支援のあり方に も差が出てきてしまうのではないかと危惧をされます。こうした意味から、本市の基盤整備の状況はどうなのかという点についてお伺いしたいと思います。
平成14年度を初年度とする本市の実施計画において、特殊学級の計画的な整備が掲げられ ております。特殊学級を新設し、作業施設や備品を整備することにより障害に応じた指導の充実を図るとして、14年度は中野木小学校、知的障害、その後、小
栗原小学校、これが情緒障害、芝山東小学校、情緒障害、船橋中学校、言語通級指導教室を順次整備していくこととしております。
このことについては、昨年の第1回定例会においてもお伺いをしましたが、どのような考え 方に基づいて計画に盛り込んだのかという質問に対するご答弁は、「市内全域のバランスを考慮して決めている。さらに、今回の実施計画の策定に当たっては、
近年の障害の多様化への対応や通級指導についても検討を重ねた上で、余裕教室が確保されていること、児童生徒の通学上の利便性や、他校の特殊学級に与える 影響が少ないこと、対象となる児童生徒数が一定の数に達しており、かつ将来にわたり継続的に学級を維持できる見通しがあること等について、十分な状況を見
きわめ、総合的に判断していく」旨のご説明でした。ただ、この際、計画の実施に当たっては、状況の変化や障害児のニーズを的確に把握し、今後慎重に取り組 んでまいりたいと考えておりますとのご答弁でした。
そもそも計画とは、達成するために策定するものだと理解しております。策定の過程で慎重 であったにしても計画に位置付けたのなら、その進捗に積極的に取り組むべきだろうと思います。状況の変化や障害児のニーズを的確に把握して取り組んでいく
とのことでしたが、実施計画において整備を図るとされた地域の障害児のニーズは何ら変わっていないと私自身は認識しております。しかるに、計画どおりに整 備が進捗しないのはどのような事情によるものなのでしょうか。これは特殊学級に限ったことではなく、ある意味、実施計画そのもののあり方、意義が問われて
いる問題だとも思うのですが、既に現場では計画自体が放棄されたような説明もなされているようです。
そもそも、計画を立てる段階で慎重な検討がなされていなかったのではないかと首をひねり たくもなります。特殊学級の整備計画を立てるに当たって、具体的にどのようなデータに基づいて検討されたのか。また、計画どおりに整備されないのは、どの
ような事情の変化によるものなのか、わかりやすくお答えいただきたいと思います。それから、今後の特殊学級の整備についてどのようにお考えになっているのか、伺っておきたいと思います。
●学校教育部長(坂口和治) 2問の特殊学級の計画的な整備につきましてお答えいたします。
特殊学級につきましては、将来にわたる児童生徒数の確保、通学の安全性や利便性、設置の ための教室の有無、地域的なバランス等を考慮しつつ、さらには児童生徒の動向や緊急性を検討しながら開設してまいりました。今後は、文部科学省及び県教育
委員会等の動向も十分に見きわめながら対応してまいりたいと考えております。
●角田秀穂議員 学校教育についてですが、特殊学級の整備については、これからも必要な箇所について優先的に整備を行っていく方針であるというふうに受けとめさせていただきました。
従来のように固定された場での教育ではなく、1人1人のニーズに対応した支援計画に基づ く適切な支援への転換という考え方、理念、今こうしたことが議論をされていますが、こうしたことが本当に障害を持つ児童生徒のために教育的な効果を発揮す
るかどうかは、これまで教育現場でどれだけの取り組みがなされてきたかにかかっていると思います。
普通学級への在籍を基本とし、必要に応じて個々のニーズに応じた支援を行うという考え方 への転換が求められておりますが、今の現状から果たしてそのようなことが本当に可能なのかどうか。例えば、本市においても障害を持つ児童が普通学級に在籍
をしております。そうした子供たちへの支援に教育委員会はどのように取り組んできたのか、あるいはまた現在取り組んでいるのでしょうか。
介助員を配置してもらいたいという要望に対しても、特殊学級の介助員すら要望にこたえら れない現状にある。それ以前に介助員はあくまでも市が特別に配置している。本当はつけなくてもよいのだけれども、配置しているという論法で、就学指導委員
会の指導に従わず通常の学級に通っている児童については、事実上親が介助してくださいという姿勢が貫かれております。本当に、これはやはり間違いであると 私自身は思います。
国の配置基準ではとても対応できないからこそ、現場からの切実な要望が上がり、(予定時 間終了5分前の合図)介助員の配置を行っているのだと思いますが、介助員の配置は予算の制約があるのなら、ボランティアの活用などで可能な手だてを講じれ
ばよいのではないでしょうかと提案しても、議会でのお答えは、これは昨年9月の議会ですが、「障害を持つ児童生徒が通常の学級に就学する場合には、校長先 生を中心とした校内の協力体制の中で対応してきました。今後も保護者、学校、行政とが一層連携を密にするよう就学指導体制の確立に努めながら、校内の協力
体制の中で対応してまいりたいと考えております」とのご答弁でした。
要は学校現場、校長の判断にゆだねており、教育委員会としてはそうした児童について積極的な対応は考えないという姿勢を表明をされました。
私の理解が間違っているというのならご答弁いただきたいと思いますが、今回の最終報告に おいても外部人材の登用がうたわれております。ボランティアの活用を含め、現状で可能なことは積極的に試みればよいのではないかと思います。特殊学級から
特別支援教育への転換という議論を契機に保護者の間に広がっているこうした不安の背景にあるのは、これまでの教育委員会の取り組みにも起因しているのでは ないかと感じております。
特別支援教育への転換による1人1人のニーズに応じた支援というものを実現する上で、教育委員会がまず本市の教育現場における課題解決に向けて先導的な役割を担うことを、ここでは強く要望いたしたいと思います。