平成15年第2回船橋市議会定例会会議録(第5号・7)

角田秀穂議員  健康政策について。ここでは特に、高齢になっても、いつまでも元気に自立した生活を送るための介護予防に絞って質問をさせていただきます。

 先日公表されました高齢者白書によりますと、65歳以上の高齢者人口は、平成14年10 月1日現在、2,363人であり、総人口に占める割合は18.5%。このうち、75歳以上の後期高齢者人口も初めて1000万人を上回りました。今後、高 齢者人口は平成32年まで急速に増加し、その後はおおむね安定的に推移する一方で、総人口が減少に転じることから高齢化率は上昇を続け、平成27年には 26.0%、4人に1人以上に達すると見込まれております。

 急速に進む高齢化に対応して、高齢者が安心して暮らすことのできる社会の形成のための各種施策の展開が強く求められております。政府の高齢社会対策大綱においても指摘をされているとおり、高齢期の自立支援への取り組みも、自治体にとって大きな課題と言えます。

 本市の要援護高齢者──介護保険の給付の対象となります高齢者の将来の推計を見てみます と、高齢者保健福祉計画、介護保険計画においては、後期高齢者の割合の上昇、介護保険制度の定着による潜在的な要介護者の掘り起こしが進むことに伴い、平 成14年9月末現在、6,657人であった利用者が、今後5年間に5,200人増加すると推定をされております。

 こうした介護を必要とする高齢者の生活の実態はどうなっているかといいますと、現在、本 市においても悉皆調査が行われておりますが、平成14年度、昨年度の本市の高齢者生活実態調査を見ますと、在宅の介護保険サービス利用者や介護保険の認定 を受けた高齢者のうち、外出の頻度が「ほとんど外出をしない」、「1カ月に1回くらい」というものを合わせて約4割に達しているという実態が明らかになっ ております。

 高齢者が閉じこもると、身体の筋力や機能も、また何かをしようとする心のエネルギーや意欲も急速に衰えてくる。また、閉じこもりよって起こる廃用性症候群から身体機能も意欲もさらに低下するという悪循環を生じ、寝たきりや痴呆に直結していくことが指摘をされております。

 高齢者の閉じこもりになる要因として、歩行を支える筋力等の低下が大きく影響していること、筋力が衰えると転倒やトイレまでの時間がかかり、失禁の恐れから外出に臆病になる可能性が高いことが挙げられております。

 このような、寝たきりに直結する悪循環を断ち切り、自立した生活、生きがいの持てる生活 を支援する試みとしまして、例えば川崎市では、歩行能力や体力、心肺機能の向上、精神機能やADL等の改善により、積極的な日常生活が可能となるパワーリ ハビリテーションを導入し、成果を上げております。

 同市が14年度に実施したモデル事業では、要介護認定において非該当あるいは要支援、要 介護1、要介護2と判定された65歳から75歳の方を対象に、市内の健康・検診センターのトレーニングルームを会場に週2回程度、合計で22回、医師、保 健師、理学療法士、運動指導員などの指導のもとでトレーニングを行いました。

 このパワーリハビリは負荷を調節できる専用のトレーニングマシーンを使用するのが特徴 で、運営者にとっては、使用方法が一定のため、指導者による技量の差が出にくく、基本的に1人で利用できるよう設計されているため、1人のセラピストで複 数の利用者を管理することができる。また、利用者にとっては、動かす筋肉が特定の部位に限られることから全身の疲労度が少なく、またパワーの向上が数値と して明確に出るため、目標を立てやすく、モチベーションを保ちやすいというメリットが指摘をされております。

 このモデル事業の利用者に対するフォローを見てみますと、利用者の意見・感想として、ま ず身体の状況つにいて。「ボランティアのおかげで自信が持てるようになった」、「体調を管理して、良好な状態で過ごせた」、「体が軽くなった気がする」、 「体重が変わらないのに、腹が少しへこんだ」、「股関節のかたさが開いてきた」「寝返りができるようになってうれしい」、「左腕が上がるようになり、当初 の目標に達した」等々の感想が寄せられております。

 また、精神の状況についても、「先生、担当者、ボランティアからパワーをもらった」、 「イライラすることが皆無で、毎日静かに安定していた」、「積極性が出てきた」、「体調がよくなり、何事にも意欲的になってきた」、「積極的に物事を考え るようになりました」、「体力の向上よりも精神面の向上が醸成をされた」、「前向きになりました。人のために役立つことはないか、私の使命は何なのかと考 えることもあります。強くなりました」など、おおむね精神的にも前向きに自身の生活をとらえていこうとする傾向があらわれてきております。

 また、このモデル事業による介護費用の低減効果についても試算がされておりますが、この モデル事業の場合、利用者は要介護者27人のほか、未申請の虚弱者7名、年齢は56歳から79歳。成果としては、27名中18名、66.7%に当たる方が 要介護度の改善が見られ、うち7名は非該当、自立となったと。要介護度の改善に要する費用軽減効果について、この結果から利用者1人当たり換算で月額 5.8万円、年額にして69.8万円との試算値が示されております。

 同市では、こうした成果を踏まえ、15年度以降、モデル事業を実施した健康・健診セン ターを拠点とした高齢者パワーリハビリテーション事業を中核として、老人福祉センターを拠点とする地域版のパワーリハビリテーション事業、さらには老人憩 の家におけるパワーリハと連動した転倒予防事業を含めた総合的なリハビリテーション事業を推進することとしております。

 このパワーリハビリ、川崎市のほかにも、今10を超える自治体で導入あるいは検討がなされているようでありましたが、これはあくまでも一例にすぎませんが、今後の健康づくりと介護予防の施策の方向性を示しているのではないかと考えます。

介護保険法では、1号被保険者の保険料を活用して介護予防事業等もできることとなっており ますが、本市の場合、そうしたことは現状では行われておりません。介護保険の基金の活用などを図りながら、今後、積極的に取り組んでいくべきと考えます が、現状での対応とあわせてご見解をお伺いしたいと思います。

健康部長(金子雅雄) 健康政策についてご答弁いたします。

 まず初めに、今後の介護予防事業に関する取り組みと適切なアセスメントに基づいた介護予防プランの提供についてお答えいたします。

 現在、これからの介護予防事業のもととなる2つの事業に取り組んでおります。1つは、国の健康日本21の趣旨を踏まえまして現在取り組んでおります仮称ふなばし健やかまちづくりプラン21でございます。

 この計画の基本方針は、健康は守るものという従来の発想を転換し、健康はつくるものとい う視点に立って生活習慣病等の発症を予防する一次予防を重視し、痴呆や寝たきりにならない状態で自立して生活できる健康寿命の延伸等の実現を目的としてい るもので、今後、介護予防の取り組みの指針となるものでございます。

 2つ目は、本年5月より、65歳以上のひとり暮らしの高齢者と高齢者のみの世帯を対象に 実施しております実態調査でございます。この調査は、今後の介護予防事業や高齢者の保健・福祉事業のもととなるほか、高齢者を地域と行政が連携して見守る 仕組みをつくるもので、調査結果を踏まえまして、ご提案いただいた適切なアセスメントに基づいた介護予防プランの提供を図ってまいりたいと考えておりま す。

 次に、川崎市のパワーリハビリテーション導入事例を参考にご質問がございました、地域保 健活動における介護予防としての総合的なリハビリの推進、介護予防効果が検証できる事業評価手法の開発、事業に要する費用として、介護保険法第175条に 基づく基金の活用についてお答えいたします。

 川崎市の事例につきましては、市としましても大変興味を持って研究しているところでござ います。川崎市では通称10円事業と呼ばれているそうでございますが、介護保険の第1号被保険者の保険料から10円を予防事業に振り向けているものでござ います。これは、介護保険法第175条において、被保険者に対する介護予防を目的とした事業を行うことができるものと定められているもので、事業の対象が 保険給付等のように要介護認定者等に限られず、被保険者全員に対するものであること、また予防事業に取り組むことにより給付費の抑制が図られることなど、 メリットがあると考えております。

 また、パワーリハビリテーションにつきましても、川崎市の実績では要介護度が改善する事 例が7割になっているほか、要介護度が変わらなくてもADLが改善したり、またパーキンソン病、腰痛、アルコール依存症などにも効果が認められているな ど、注目すべき内容が報じられております。

 今後とも介護予防事業につきましては、効果に関する評価手法のほか、市民ニーズ、費用対効果、他事業との連携など、研究してまいりたいと考えております。

角田秀穂議員  康政策について。

 川崎市の取り組み等、非常に注目をされて、研究をされているということでございました。 特に大事なことは、川崎市でも今までのモデル事業の結果を含めた反省として、これまでは介護保険制度、市独自の高齢者福祉施策、さらに老人保健事業につい て、それぞれ個々に介護予防やリハビリに関するサービスは行っていたものの、(予定時間終了5分前の合図)そういった施策の有機的な関連づけが必ずしも明 確でなかった。今後はそうした有機的な関連づけを含めた横の連携、事業間の連携を図りながら施策を進めていこうというようなことを打ち出しております。一 番肝心なのはこういったことだと思いますので、そうしたことを含めまして、今後さらに充実を図っていただきたいというふうに要望をさせていただきます。

 また、中心となる施設も、本市にはケア・リハビリセンター等ございますので、そうしたところの活用策としてもまた検討を進めていただきたいというふうに思います。