平成13年第4回船橋市議会定例会会議録(第6号・2-1)

角田秀穂議員  子供と本との出会いについて質問をさせていただきます。

 子どもの読書活動推進法が今月5日に国会で成立をいたしました。同法では、基本理念にお いて、読書活動を子供が言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、想像力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠かすことができな いものと定義して、子供の読書活動を推進するため、国や自治体の責務を定め、具体的な施策を総合的かつ計画的に推進することをうたっております。また、保 護者に対しても、子供が読書する機会を多く持つ工夫などの役割を果たすこととも求めております。

 子供の読書離れが我が国では言われて久しくなります。つい先日も新聞に、OECDが世界 32カ国の15歳の生徒を対象に実施した学力調査でも、読書をしない子が最も多いという結果が報じられておりました。テレビを初めとするさまざまなメディ アの発達により、子供たちを取り巻く環境も大きく変化をしておりますが、本に親しむことによってもたらされる価値、人生にいかに大きな影響を与えていくか について、「見ることはせつな的であり、読むことは永続性がある」と端的に表現した言葉もございます。時代を超えて、まさにそのとおりだと感じさせる表現 だと思います。

 読書活動推進法の成立を受け、国においても具体的な施策づくりに取り組んでいくことに なっておりますが、市においても、子供があらゆる機会と場所で自主的に読書を行えるような環境づくりに取り組んでいくことが強く求められていると思いま す。こうした流れを踏まえて、幾つか質問をさせていただきます。

 読書に親しむ習慣を身につけるには、まず、子供に本との出会いの機会をいかに多く提供で きるか、そのためにいかに努力をするかにかかっているのではないかと思います。だれでもそうだと思うのですが、議場の皆さんも若いころ、子供のころに出 会ったこの1冊、読書の喜びを知ったこの1冊というものをお持ちではないかと思います。

 私の場合は、読書が好きになったきっかけは、小学生のころに両親からプレゼントされた 本、特に父親から贈られた1冊の小説でありました。それ以前にも絵本を読んでもらったりしていたことはありますが、これを自分で読んでみなさいと最初に本 を私に手渡したのは、母親でした。小学校1年生のときでした。ホール・ケインの著書「永遠の都」という小説でしたが、そのときは漢字が読めずに、最初の数 ページだけでほうり出してしまった思い出があります。

 これに対して、父親はタイミングを図っていたのだと思いますが、小学校4年生になったと きに、父親から初めて贈られた本が、ビクトル・ユーゴーの「93年」という小説でございました。その本を読了したときの感動は、いつまでも、今でも鮮明に 覚えております。このときから、私は読書の楽しさを知ったと言ってもいいと思います。

 これはあくまでも個人的な体験です。本好きになるきっかけはさまざまあると思いますが、いずれにせよ、そのような出会いの機会をどれだけふやしていくかが大事なことではなかろうかと思います。

 その1つとして、学校図書館の機能の充実と環境整備ということについて、子ども読書年と された昨年において、本市においても実行委員会を組織して読書活動推進事業の推進が図られ、子供の読書意欲を一層高めるために、子供たちの読書するよりよ い環境づくりとして、図書館の本の配架や環境を整備し、蔵書の計画的な購入、子供に読書紹介のできる場としての図書室及び余裕教室の活用等が進められたと ころであります。

 今後を考える上で、まずその評価についてお伺いしたいと思います。具体的に図書の貸し出しの状況はどのように変化が見られたのでしょうか。また、蔵書の現状についてはどうなったのか、図書標準に対する現在の整備状況についてお伺いしたいと思います。

 また、その効果が認識されつつある朝の読書運動は、船橋の場合どれだけの学校で実施をされているのか、あわせてお伺いをいたします。

 子供と本の出会いの機会づくりには、専任の司書を配置することが非常に有効だというよう な取り組みの報告もございます。一例として、平成10年度から図書館司書の資格を有する正規の職員を市内の全小中学校に配置した石川県松任市の場合、正規 職員配置前に比較して、学校図書館の貸し出し実績が50倍に増加した。具体的には、平成8年度の貸し出し実績が年間403冊だったものが、平成11年度に おいては1万9675冊へと飛躍的に増加した。その結果として、生徒児童の希望する図書の購入が進んだ。そうした希望する図書の購入が進んだことの結果と して、さらに利用者が拡大をした。授業での活用も増加した。また、これは司書本人がおっしゃっていたことですけれども、「子供たちは自分を評価しない人と いう意識で接してくる」というように、図書館が学校内でほっと心の休まる場所にもなった。司書自身も、身分が臨時職のときよりも、やる気が明らかに違う。 また、全校に配置されているため、運営方法等について情報や意見の交換ができ、よりよい図書館づくりが進んでいるなど、当初予想した以上の効果が上がって いるとの報告がなされております。

 松任市の中学校の現場を実際に視察させていただきました。まず、図書室に入る手前から、 入り口前の廊下から、新刊の単行本などが、だれでもすぐ手にとって眺められるように並べられており、入り口前の壁には、先生の心に残る1冊という紹介文が 一面に張られております。それらを眺めているうちに、自然に図書室に足を踏み入れるというような工夫も凝らされているわけですけれども、図書室に足を踏み 入れますと、ちょうど訪れたときは昼の休み時間でしたが、開放的な雰囲気の部屋の中に、生徒がまさにあふれ返っておりました。

 案内いただいた校長によりますと、今、試験期間なので、これでも少ない方なんですよというようなご説明でしたが、とにかくそこらじゅうに生徒があふれている、そのような印象でありました。

 また、図書室の壁にも、壁のスペースも有効に使われ、「この本読んでみよう」と題して、 新刊書の内容を写真入りで紹介したコーナーが設けられ、壁一面に手づくりの紹介文が張られておりました。図書の配置も、中学生が利用しやすいようにと、図 書館とは違う視点から工夫されているのがよくわかりました。これらは、いずれも専任の司書の手になるもので、こうした細やかな配慮が想像以上の成果を上げ ている大きな源となっているということがよくわかりました。

 視察に訪れたときも、忙しそうに司書の方は作業されていました。その司書の方の作業を女子生徒が寄ってたかって手伝おうとしている光景が何ともほほえましく、特に印象に残っております。

 平成15年には、司書教諭が全学校に配置される予定となっています。本市においても、そ れに向けての準備を進められていることと思いますが、担任などを兼ねる司書教諭を配置しましたということだけでは、松任市のようなここまでの効果を期待す ることは難しいのではないかと思います。

 ただ、一方、松任市のケースのように、それができれば理想だとは確かに思いますが、やは り小中学校全部で13校という規模の自治体において、首長が優先してやっていこうと決断した結果できたことであり、それをそのまま本市において直ちに実施 するということは現実的ではないでしょう。しかしながら、同市の成功例から学び、本市の読書活動推進のために取り入れていけることはあると思います。

 松任市の場合、専任の司書を置いたということが当然大きい要因となっているのですが、そ れに加えて、いかに子供たちに利用されるようにするかということについて、頻繁に情報や意見を交換する場を持ったということが、すべての学校で飛躍的な効 果を上げた要因となっております。

 ですから、例えば希望する学校、1校でも2校でもよいから専任の司書をまず配置してみ る。また、子供の読書活動推進のための市内全小中学校、さらには図書館等で組織する協議会のようなものを立ち上げ、専任司書が試行錯誤の中で培った経験、 ノウハウなども含めた情報交流を進めることで、市全体としての読書活動の向上を図っていくことも考え得ると思います。こうしたことについて、教育委員会の ご見解をお伺いしたいと思います。

 さらに、本との出会いの機会をいかにふやしていくかということに関して、学校図書館の地域への開放ということも、子供の読書活動推進の上から、また、地域に開かれた学校づくりという観点からも、ぜひとも積極的に進めていくべきことだと考えます。

 図書館や公民館等に加えて、身近なところに本と親しむ機会をつくっていく上で、既存の学校図書室を活用しない手はないと思います。そのためには、蔵書の充実や市内図書館との連携強化にとどまらず、さらなる機能の充実が課題となってこようかとは思います。

 学校図書館の開放を積極的に進めている札幌市では、ことし10月現在70校──うち小学 校69校、中学校1校ですが──で学校図書館の開放が実施されており、地域住民に大変親しまれているということであります。同市では、読書活動を中心とし た地域の教育力の向上を目的に、今から23年前に学校図書室の開放をスタートさせ、以後、順次拡大を進めてまいりました。昨年度の利用状況は、1校当たり の平均で、開放日数が年間109日、利用者人数は7,700名余り、貸し出し数は1万2114冊となっております。その運営については、各学校のPTAに 委託するという手法をとり、日常的に1校当たり50名のボランティアがその図書館の運営を担っております。

 運営のために、図書購入費なども含め1校当たり年間80万円を支給しているそうですが、 こうした中でさまざまな工夫が学校ごとで試みられており、ある学校においては、毎週1回ボランティアによる読み聞かせを行ったり、また、別の学校では人形 劇や紙芝居、さらにまた別の学校では星の観察会なども実施されており、地域から親しまれる施設として、今やすっかり定着しているとのことであります。

 こうした取り組みは、学校と地域社会との連携を深めるという視点からも大いに参考にすべき事例と考えます。子供と本の出会いの機会を少しでも多く提供していく上で、ぜひとも考えていくべきものと思いますが、これについてもご見解をお伺いしたいと思います。

学校教育部長(皆川征夫)  子供と本の出会いについて何点かのご質問をいただきましたので、お答え申し上げます。

 最初に、学校図書館の環境整備と図書室及び余裕教室の活用等の評価についてお答え申し上げます。

 各学校の図書館の貸し出しは、新刊書の購入、低学年図書室の設置、読み聞かせや調べ学習の場としての余裕教室の活用等により、確実に伸びてきてございます。

 蔵書の現状についてでございますが、現在は主に文学的な図書が多いことは事実ですが、これからは総合的な学習等に関する図書をふやしていくことが大切であると考えております。

 図書標準に対する整備状況は、約8割の学校が達しておりますが、そのほかにつきましては 計画的に整備を進めるとともに、公共図書館や学校図書館との図書流通システムの導入によりまして、図書の共有化を図り、いつでも、どこからでも必要な図書 を手に入れることができるようにしてまいりたい、このように考えてございます。

 また、朝の読書運動を行っている学校は、現在小学校11校、中学校2校ですが、朝に限ら ず一斉に読書運動の時間を設けている学校がふえてきております。これらのことから、学校図書館の環境整備と、図書室及び余裕教室等の活用は徐々に進められ てきていると評価できると思います。

 次に、学校図書館の機能の充実及び地域への開放についてでございますが、これからの学校 図書館は、読書センターとあわせまして、コンピュータの導入により学習情報センターとしての機能を効果的に発揮していくことが求められていると思います。 インターネットの活用や貸し出し業務の充実を図るとともに、地域に開かれた図書館づくりを前向きに進めてまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、読書は心の糧と言われますように、小学校、中学校のときに良書 と出会うことは、その後の人生に大きな影響を与えるものと考えております。教育委員会といたしましては、これからも子供が読書を通して得られる知識や刺激 や感動など、読書の楽しさを味わい、本との出会いの機会が多く提供されるよう支援してまいりたいと思います。

 それから、図書職員の配置についてのご質問でございますが、現在、既に図書事務として何校かの小学校に配置しております。それなりの成果を上げてございますので、こういった成果を見せながら、今後図書事務等の配置については検討してまいりたいと思います。

 また、読書ボランティアの学校における活用のご質問でございますが、これも読書ボラン ティアについては、かなり多くの学校で近年活用はされてくるようになってきてございます。若干まだ学校間の格差が大きいところもございますので、今後、読 書ボランティアの育成も含めまして、学校で積極的に活用ができるように配慮してまいりたいと思います。

角田秀穂議員 子供と本との出会いに関してですけれども、今の、主に学校の図書館をいかに機能を強化していくか、ま た地域のそうした本に親しむ場として活用していくかということで質問させていただきました。これについての取り組みは、本当にこれからますます重要になっ てくることは間違いないと思います。財政上の制約もあるというようなお話でしたけれども、この辺も今回要望させていただいた、伺わせていただいた趣旨を踏 まえてしっかりと取り組んでいっていただきたいことを要望とさせていただきます。

 また、この本との出会いの場の創出ということに関しまして、さらに幼児期における読み聞 かせの推進、これも非常に大事なことであろうと思います。過去の議会においてもいろいろ議論をされてまいりました。ブックスタート事業のスタート、早期の 実施、こうしたものも大事かと思います。検討していただきたいと思いますけれども、現状、今船橋では各種のサークルなどの活動として読み聞かせなどが実施 されているようです。ただ、実態としては、それほど大きな広がりにはなっていない現状があると思います。そうした中で、市としてもできるだけそうした機会 をふやすために、積極的な取り組みが求められていると思います。

 今後の取り組みについて、1つとしては、今、子育て支援センターの役割というものが非常 に重要になってきている。それだけニーズも高まっているということで、今後、市内の各所に順次配置をしていくということになっております。こうした子育て センターなども活用して、そうした読み聞かせの機会をできるだけ多くしていく努力、こうしたことも必要ではないかと思います。こうしたことに関しては、幼 児期からの取り組みということに関して、読み聞かせの普及ということに関して、ご所見をお伺いしておきたいと思います。

学校教育部長(皆川征夫) それでは、本との出会いについての2問にお答えを申し上げます。

 子育て支援センターでも幼児期の読書指導を支援していったらどうかというご質問でござい ますが、子供が一番最初に本に出会うというのは家庭だと思うんですね。したがって、家庭でどういう読書と接触していくのかということは大変大事だと思って います。そのほかにも、今ご指摘の子育て支援センター等の関係機関で連携して、幼児の読書の環境を整えていくこともまた大変大事だと思っておりますので、 ぜひその関係機関とも連携をとりながら、子供のよりよい環境をつくってまいりたいと思います。

福祉サービス部長(飯島和男) ご質問の子供と本の出会いについての中の、子育て支援センターにおける本の読み聞かせについてお答えいたします。

 子育て支援センターは、就学前児童とその保護者を対象とした施設でありますので、絵本を 初めとした児童に対する図書も(予定終了時間5分前の合図)250冊程度用意してありますが、来年度に向けて子育て支援センターの自主事業として、ボラン ティアの方々のご協力を得て、月1回の絵本の読み聞かせ会を準備しているところでございます。

 また、現在、本の読み聞かせの上で保護者の方々が中心となり、サークルをつくり活動を開 始しようとしております。乳幼児期から本に親しみ、読書する喜びを身につけることは、人間形成上極めて重要なことと考えておりますので、これからの事業の 充実についても努力してまいりたいと思います。